退職者の不正アクセス、情報持ち出しの防止対策
「退職した社員が会社の商品企画情報を持って競合他社に転職した」
「上司からのパワハラへの腹いせに退職者が顧客情報を流出させた」
このような退職者による情報漏洩・不正アクセスは、会社の規模に関わらず発生しており、たびたび報道されています。
このページでは、退職者による不正アクセスの手口や、トラブルを防ぐ対策について解説させていただきます。
この記事でわかること
- 退職者が不正アクセス、情報持ち出しを行う目的
- 退職者による不正の主な手口
- 不正アクセス、情報持ち出しが発生したときの企業リスク
- 不正アクセス、情報持ち出しを防ぐ対策
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退職者が不正アクセスをする目的は?
退職者による不正アクセスや情報の持ち出しを防ぐには、まず「なぜ不正が起きるのか」を理解することが大切です。
ここでは、内部不正を読み解く理論「不正のトライアングル」を使って、退職者の行動のメカニズムを整理します。
不正のトライアングルとは?
不正のトライアングルとは、アメリカの犯罪学者ドナルド・R・クレッシーが提唱した理論で、人が不正をするときには「動機」「機会」「正当化」の3つの要素が揃っていることが多いとされています。
- 動機
- 不正をしようとするきっかけや心理的なプレッシャー
- 機会
- 不正ができる環境や状況(バレない、できる仕組みがある)
- 正当化
- 「これくらいいいだろう」と自分の行動を納得させる心理
3要素が揃うと不正が起きやすくなりますが、なかでも「機会」は環境を整えることで確実に減らせます。
防犯カメラや入退室管理は、不正を行う「機会」を潰す手段として効果的です。
仕組みで不正を防ぐ環境づくりをするには、出入りのログや現地状況を録画できる設備がおすすめです。
退職者が不正をする動機
退職者が情報を持ち出したり、システムに不正アクセスしたりする背景には、主に3つの動機が考えられます。
退職者による不正の動機例
- 転職先での評価を高めたい…顧客リストや営業秘密を持ち込むことで、転職先での即戦力アピールに使う
- 会社への不満・報復…退職トラブルや不当な扱いへの腹いせとして、情報漏洩や業務妨害に走る
- 金銭目的…競合他社や第三者に情報を売ることで利益を得ようとする
不正を行う動機を防ぐには、待遇や福利厚生を充実させる方法もありますが、会社の体制や仕組みだけで動機をすべて防ぐのは難しいといえます。
だからこそ、「機会」そのものをなくす対策を行うことが重要です。
不正の機会を生む職場環境とは
退職者が不正をできる「機会」の典型的な例を見てみましょう。
- 書庫や重要資料保管室に誰でも出入りできる
- 退職後もIDやカードキーが有効なまま残っている
- 社内に防犯カメラがなく、誰が何をしたか記録が残らない
- 夜間・休日に一人でオフィスに入っても誰も知らない
こうした隙がある職場では、不正が起きやすくなります。
防犯カメラと入退室管理を設置し、職場に周知しておけば、不正をする選択肢をなくしやすくなります。
退職者の不正アクセス・情報持ち出しの主な手口
実際に退職者による不正アクセスはどのような形で起きるのでしょうか。
代表的な3つの手口を整理します。
退職前に情報を持ち出し
起こりやすいのが、在職中に、正規のアクセス権を使ってデータを持ち出すパターンです。
「在職中の通常業務」と見分けがつきにくいため、業務終了後の夜間や、休日出勤をして人の少ない時間帯に行うようなケースも考えられます。
退職前のデータ持ち出し例
- 業務PCからUSBメモリにファイルをコピーする
- 顧客リストや営業資料を個人のメールアドレスに転送する
- Googleドライブなどのクラウドストレージにアップロードしてダウンロードする
- 資料を印刷して持ち帰る
- 画面をスマートフォンで撮影する
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退職後にオフィスや倉庫へ物理的に侵入する
鍵を返却していない、またはコピーを持っている元社員が、退職後に無断でオフィスや書庫・倉庫へ立ち入るケースです。
この手口は、元関係者だからこそ知っているセキュリティが手薄な箇所や時間が狙われることが考えられます。
このような退職後の侵入には、顔認証システム、防犯センサーといった定番のセキュリティのほか、威嚇機能付きの防犯カメラや、AI顔認証システムもおすすめです。
退職後の侵入手口例
- 無人の時間を見計らって窓やドアから侵入する
- 在職中に鍵をコピーし、退職後に侵入する
\退職者の侵入対策におすすめなのはこれ!/
退職後も有効なままのアカウントで侵入する
退職処理が不完全なまま放置されたIDとパスワードを使い、退職後もシステムにログインするパターンです。
過去には元社員が前々職のシステムに深夜に不正ログインして営業秘密を取得したことで逮捕された事件もありました。
アクセスログの監視で「深夜に同じアカウントから大量のアクセスが繰り返されている」という異常が検知されたことで発覚しています。
外部からの不審なアクセスにはサイバーセキュリティも効果的ですが、このような不正アクセスを防ぐには、退職日に確実にIDを無効化する仕組みや、ログ監視ツールの導入など、ID・パスワードを知る元関係者への対策も整えておくことが重要です。
退職者の不正アクセス・情報持ち出しによるリスク
退職者による不正アクセスや情報持ち出しは、場合によっては企業の信用性低下、損害賠償が発生するなど大きな影響を及ぼすことがあります。
ここでは、退職者による不正アクセス、情報持ち出しが起きた時のリスクを解説させていただきます。
損害賠償・法的責任のリスク
個人情報が漏洩した場合、過去の判例では1件あたり数千円〜数万円の損害賠償が認められています。
営業秘密が持ち出された場合は、不正競争防止法違反として以下の責任を追及できます。
- 民事:損害賠償請求+使用・開示の差止請求
- 刑事:10年以下の拘禁刑または2,000万円以下の罰金
ただし、「企業の情報管理が不十分だった」として企業側も問われるリスクがある点には注意が必要です。
退職者へ責任を問えるかどうかは、普段の情報管理体制の水準にも左右されます。
顧客・取引先からの信用失墜リスク
情報漏洩が発覚すると、顧客と取引先への謝罪・報告対応が必要になります。
報道されれば風評被害に発展し、売上減少が長期化することも珍しくありません。
プライバシーマーク(Pマーク)やISMS認証を取得している企業は、認証の取り消し対象になるケースもあります。
取引先が高いセキュリティ基準を求めている場合、認証の取り消しは取引そのものの消滅につながるリスクがあります。
競争力の低下(営業秘密・顧客情報の流出)
顧客リストや見積書・開発情報が競合他社に渡ると、会社の競争力を直接失います。
- 元社員が転職先で自社の顧客を引き抜く「顧客の水平移動」が起きる
- 新商品・サービスの情報が先に漏れることで、市場投入のタイミングを失う
- 価格情報が競合に渡り、見積もり競争で常に後手に回ってしまう
情報漏洩の被害は「お詫びメールを送れば終わり」ではありません。
競争力の喪失という形で、事件が解決した後も会社の信用・売上に影響を与え続けるリスクがあります。
退職者の不正アクセスを防ぐ対策5選
退職者の不正アクセスは、正しい対策の組み合わせで大幅に防げます。
「退職時に行うことのルール決め」「物理セキュリティ」「制度・法的整備」の三方向から整備しましょう。
①退職当日にアカウントとアクセス権を完全停止する

退職処理の中で、IDの無効化は漏れやすい作業の一つです。
在職中に複数のツールを使っていると、各ツールでの作業が必要になります。
退職当日に停止するチェックリストを用意漏れを防ぐことが大切です。
「退職チェックリスト」として文書化することで、担当者が変わっても処理の漏れを防げます。
漏れはない?各社員がよく持っているアカウント
- 社内システム・ERPのアカウント
- 業務用メールアカウント
- VPN・リモートアクセスの認証情報
- Slack等のコラボレーションツールのID
- クラウドサービス(Google Workspace・Microsoft 365等)のアカウント
②防犯カメラで退職前後の行動を記録し「不正の機会」を奪う

不正アクセス対策で役立つ防犯カメラの機能は、「映像証拠の記録」と「心理的な抑止力」の2つです。
書庫の入口・デスクエリア・サーバールーム前など、情報に近い場所に設置することで、退職直前のUSB接続・印刷・スマートフォン撮影といった不審な行動を映像として残せます。
証拠が残ってしまうというだけでも、不正アクセスを減らせるでしょう。
なかでもAI人検知機能付きのカメラは、業務時間外に人の侵入を検知した際にスマートフォンへ通知できるため、深夜の無断入室にもリアルタイムで気づくことができ、早期発見につながります。
③入退室管理システムで関係者以外の出入りを防止

入退室管理システムは、退職日にカードキーや顔認証の権限を無効化するだけで、翌日から物理的な侵入を完全に遮断できます。
また、入退室のたびに「誰がいつ入室・退室したか」がログとして自動記録されるため、退職後に不正侵入があった際の法的証拠にもなります。
書庫・サーバールーム・重要書類保管室など、エリアごとに権限を細かく設定することで、多層的なアクセス制限が可能です。
合わせて防犯カメラを設置しておくことで、万が一の時の証拠能力がアップします。
④秘密保持誓約書・就業規則で法的に抑止する

法的な抑止力として、以下の整備が有効です。
- 入社時と退職時の両方で秘密保持誓約書を締結する
- 退職後の守秘義務期間を就業規則に明記する(一般的に3〜5年)
- 「情報の持ち出しは懲戒・損害賠償の対象になる」と明確に規定する
秘密保持誓約書は、損害賠償請求時の重要な証拠になります。
誓約書がなくても不正競争防止法で対抗できますが、誓約書があると立証が格段に容易になります。
⑤アクセスログを定期確認して不審なアクセスを早期発見する

退職直前・退職後に社内システムへの不審なアクセスがないかを確認する体制を整えましょう。
以下のような異常が発見されたら、速やかに調査を開始してください。
- 業務時間外・休日に特定のアカウントからの大量アクセスがある
- 退職済みのアカウントでのログイン試行・成功ログがある
- 通常業務では必要ないファイルへの大量アクセスがある
ログを確認する習慣が、退職者の不正アクセスの「早期発見」に直結します。
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退職者の不正アクセス、情報持ち出しが発覚した時の対応
実際、退職者による不正アクセスや情報持ち出しが起きたら、どのように対応すれば良いのでしょうか。
ここでは、対応の流れの例をご紹介します。
まずは証拠保全(消さない・動かさない)

不正アクセスや情報持ち出しの発生時、まずやるべきことは、証拠となるデータの保全です。
防犯カメラの録画映像やサーバーログなど、証拠になりうる情報を出来る限り残しましょう。
不正アクセス、情報持ち出しの証拠確保
- サーバーログ・アクセス履歴を上書き・削除しない
- 防犯カメラの映像データを保存する(上書きされる前に退避)
- 入退室管理のログを確認して記録を保全する
- 怪しいと思っても、PCや端末を勝手に調査・操作しない(証拠能力を損なうリスクがある)
社内調査を進め、必要であれば専門機関に依頼する

証拠を確保したら、社内のIT担当者または外部の専門機関と連携して実態を把握します。
防犯カメラと入退室管理のログが残っていれば、「物理的にいつオフィスに入ったか」と「デジタル上のアクセス履歴」を組み合わせて証拠を補強できます。
社内調査の流れ
- アクセスログと防犯カメラの映像を照合して「いつ・誰が・何をしたか」を特定する
- 持ち出されたデータの範囲を特定する
- 被害が広範囲であれば、調査会社への依頼を検討する
損害賠償請求・刑事告訴など法的対応の流れ

証拠が揃ったら、弁護士と連携して法的対応を進めましょう。
退職者の不正アクセスには、以下の法律が適用される可能性があります。
退職者の不正アクセス・情報持ち出しはどんな罪に当たるのか?
| 行為 | 適用法 | 罰則 |
|---|---|---|
| 退職後にIDでシステムへ侵入 | 不正アクセス禁止法 | 3年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金 |
| 営業秘密の持ち出し・使用 | 不正競争防止法 | 10年以下の拘禁刑または2,000万円以下の罰金 |
「内部調査→刑事告訴→警察捜査への継続的な協力」という時間を必要とする流れになりますが、発覚から10ヶ月後に元社員が逮捕された事例もあります。
退職者の不正アクセス、情報持ち出しに関するよくある質問
退職者の不正アクセスについてよくある質問を紹介します。
- 退職者による情報持ち出しを防ぐ、一番有効な方法は何ですか?
- 退職当日にアカウントの停止と入退室権限の無効化を確実に行うことが最優先です。
次に、社内の重要エリアに防犯カメラを設置し、退職直前の行動を映像として記録する体制を整えましょう。 - 退職者に不正アクセスされると、会社はどうなりますか?
- 顧客情報や営業秘密が流出した場合、取引先への謝罪・報告対応が必要になり、損害賠償請求の対象になる可能性があります。
また、情報が競合他社に渡れば売上や競争力に直接的なダメージを受けます。さらに、報道されれば風評被害が長期化するリスクもあります。 - 会社のデータを退職者が持ち出したら罪になりますか?
- なります。持ち出した情報が「営業秘密」に該当する場合、不正競争防止法違反として10年以下の拘禁刑または2,000万円以下の罰金が科されます。
また、退職後にIDでシステムへログインした場合は不正アクセス禁止法違反にもなり、3年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金の対象です。 - 防犯カメラは退職者の不正アクセス対策に本当に役立ちますか?
- はい、2つの面で有効です。ひとつは「証拠の記録」としての機能で、USB接続・書類持ち出し・スマートフォン撮影などの行動を映像として残せます。
もうひとつは「心理的な抑止力」として機能する点です。カメラが設置されていると知るだけで、不正行動を思いとどまらせる効果があります。
退職者による不正アクセス、情報持ち出しについて まとめ
退職者の不正アクセスや情報持ち出しなどの不正行為は、「動機・機会・正当化」の3要素が揃うことで起きやすくなります。
このうち「機会」は、設備や仕組みなど、企業努力で不正を防ぐことができる要素です。
退職者によるトラブルを防ぐために確認したいこと
- 退職当日のアカウント・アクセス権の完全停止
- 防犯カメラで退職前後の行動を記録・抑止する
- 入退室管理で退職後の物理的侵入を遮断する
- 秘密保持誓約書・就業規則の整備
- アクセスログの定期確認で早期発見体制を整える
万が一発覚した場合は、「証拠の保全→社内調査→法的対応」「の順番を守ることが重要です。
防犯カメラの映像と入退室ログが残っていれば、デジタルの証跡と物理の証跡を組み合わせて、より確かな証拠として活用できます。
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