温泉の熊が気になる方へ
全国の被害・出没状況と安全に楽しむための対策を紹介

岩手・北上温泉で熊被害が報道された

2025年、熊の出没が相次ぐなかで、岩手県北上市の温泉旅館でも被害が発生しました。

温泉旅館に勤める従業員が露天風呂清掃中に行方不明になり、付近に熊と見られる体毛や血痕が残されていたようです。

後日、露天風呂から約50メートル離れた雑木林で遺体が見つかり、付近にいた熊が駆除されました。

参考：岩手日報「クマ被害か、従業員が行方不明　露天風呂に血痕と獣毛　北上・瀬美温泉」

実際に露天風呂で従業員が熊被害に遭ったことから、身の危険を感じる方が増えたことが問題になっている理由の1つです。

熊被害が過去に例を見ないほど増えている

ここ数年、熊被害は一気に増加しています。
とくに2025年は、熊出没件数、熊被害共に例年と比較して増加しているのが実情です。

出没件数、被害件数の具体的な数値は下表をご覧ください。

出典：環境省「野生鳥獣の保護及び管理」

被害が例年以上に多発しているため、温泉にも熊が出るのではと不安に感じる方が多いことも、問題視されている理由です。

温泉地は熊が出没しやすい地域にあるため

温泉地の多くは、もともと熊の生息域と重なっています。

温泉は山間部や自然豊かなエリアに湧くことが多く、熊にとっても住みやすい環境です。
そのため、人と熊の生活圏が近くなりやすいです。

温泉地には以下のような特徴があります。

• 山中や渓谷沿いに立地している
• 森林が近く、熊の通り道になりやすい
• 食べ物のにおいやごみが熊を引き寄せやすい

自然に囲まれた温泉は魅力がある一方で、熊が出やすい環境でもあります。

とくに秋は、温泉を楽しめるシーズンであるものの、熊が出没しやすい季節です。
そのため、温泉の熊被害は身近に感じ、不安を抱えている方も多くいらっしゃいます。

実際に熊被害にあった温泉旅館の対応

実際に熊被害があった岩手県の温泉では、宿泊と日帰り温泉が休止され、警察と猟友会の捜査が始まりました。

最終的に被害の原因となった熊は駆除されたものの、その後も周辺の捜査が続けられています。

観光地・旅館の熊対策

熊が出没する観光地では、旅館単体ではなく、自治体・観光協会・地元住民が協力して熊対策を行っています。

主な対策としては次のとおりです。

熊検知AIカメラでの予防

熊対策としてトリニティーでは、熊の出没を検知するAIカメラ「熊検知AI」のレンタルをスタートしました。

熊検知AIとは、屋外へ設置したAIカメラが熊を検知し、すぐにスマートフォンへ通知をするカメラシステムです。

その場にいなくても、リアルタイムで熊の出没を知ることができ、迅速な対応が可能となります。

熊が出没する地域と生息しない地域

まずは、熊が生息しない地域を把握して、その地域から好きな温泉地に訪れるのも手です。

現在日本列島では、北海道にヒグマ、本州にツキノワグマが生息しています。
熊が生息していないとされるのは、次の地域です。

出典：環境省「クマ類の生息状況、及び被害状況等について」

温泉で熊との遭遇を避けるには、上記のような地域を選択するのがよいでしょう。

千葉県の温泉地

千葉県の温泉地は、本州で唯一熊が生息していないため、安心して入浴や観光を楽しめます。

千葉県に熊がいない理由としては、大部分を占める房総半島が三方を海に囲まれ、北側も大きな川によって他の山地と隔てられているためです。

地理的に熊が移動するのが困難だったため、生息していないとされています。

千葉県で人気がある主な温泉地は次のとおりです。

• 鴨川温泉：海を眺めながら入れる露天風呂が人気
• 小湊温泉：漁港町ならではの情緒が味わえる
• 養老渓谷温泉郷：紅葉と渓流の景観が楽しめる自然派温泉

九州の温泉地

九州には以前、ツキノワグマが生息していました。

ただ、環境省の調査によると、1957年の捕獲を最後に熊が出没しておらず、2012年に絶滅したとされています。

参考：環境省「第4次レッドリストの公表について（お知らせ）」

そのため、九州も熊の心配なく温泉を楽しめる地域です。

九州の有名な温泉には以下があります。

• 別府温泉（大分県）：市街地にあり、熊の出没報告なし
• 由布院温泉（大分県）：観光整備が進み、自然と安全が両立
• 指宿温泉（鹿児島県）：海辺の砂むし温泉で熊の心配ゼロ

四国の温泉地(熊のいない地域)

四国は、千葉県や九州とは異なり、野生のツキノワグマが絶滅に瀕しながらもわずかに生息している地域です。

個体数は20程度とされており、熊に遭遇する可能性はほとんどありません。

四国で人気のある温泉は次のとおりです。

• 道後温泉（愛媛県）：日本最古の名湯で、街中に位置し安全性が高い
• こんぴら温泉郷（香川県）：観光とセットで楽しめる癒しの湯
• 祖谷温泉（徳島県）：渓谷美が見事でも熊の心配なし

沖縄の温泉地

沖縄県は、本州や北海道とは海で隔たれているため、熊が生息していないとされています。

そのため、熊に遭遇する心配はありません。

沖縄は温泉のイメージはないかもしれませんが、以下のような温泉施設が人気です。

• 瀬長島温泉：海を一望できる絶景露天風呂
• ジュラ紀温泉美ら海の湯：美ら海水族館からも近い
• ホテル ラ・ティーダ西表：日本最南端で最西端でもある温泉

出没エリアを事前にチェックしておく

温泉旅行の前に「熊の出没情報」を調べておくと、危険を減らせます。

熊は地域や季節によって出没傾向が異なるため、直前に現れた場所を把握しておきましょう。

具体的には以下のような方法があります。

• 各自治体の「熊出没マップ」や「防災アプリ」で最新情報を確認
• 旅館や観光協会に問い合わせて現地の状況を把握
• 山道や林道の通行情報をチェック

事前に情報を集めておくことで、温泉地で熊と遭遇する可能性を避けられます。

熊対策を万全にしておく

熊の出没がある地域へ行く際は、個人レベルでも熊対策を徹底しましょう。
事前準備を万全にしておけば、危険を下げられます。

一般的な熊対策は次のとおりです。

• 熊鈴やラジオなど、音の出るものを身につけて歩く
• 夜間や早朝の単独行動を避け、複数人で行動する
• 食料や生ゴミは密閉容器で保管し、絶対に放置しない
• 熊スプレーなど護身用具を携帯し、使用方法を事前に確認しておく

ただし、熊には個体差があり、その地域では一般的な熊対策が逆効果になるケースもあります。

事前にその地域の熊情報を確認しておくのが前提です。

季節を考慮する

熊の活動が活発になる季節を避けて温泉旅行を計画するのも選択肢の1つです。
熊は季節によって行動範囲が変わるためです。

季節ごとの特徴を知ることで、安全な時期を選べます。

具体的には次のとおりです。

熊の活動時期を把握しておくだけでも、安心して温泉に行けます。

地域が熊対策を行っているか確認しておく

温泉地を選ぶときは、地域や旅館がどのような熊対策をしているかも大切です。
施設や自治体によって対策レベルは異なり、事前に把握しておくと安心できます。

確認しておきたい対策としては次のとおりです。

• 旅館周辺に「熊注意」の掲示や警報装置が設置されている
• 夜間照明・監視カメラなどの安全設備が整っている
• 地元の猟友会や自治体と連携してパトロールを行っている

旅行前のひと手間で、安全性は格段に上がります。